アディザイン・Web事業部の吉田です。
グループのLEDビジョン事業「アディザネージ」で、SNSをどう回すかの提案書を、AIに作ってもらいました。頼んだのは、音声入力で話した短い指示だけです。
それでも、5つのSNSの役目、コンテンツ10案、現場での撮り方、3か月の始め方、効果の見方まで入った提案書ができあがりました。短く済んだのは、AIが読める形で会社の情報と、仕事の進め方のルールを先に整えていたからです。
SNS運用の戦略作りは、普通の会社では苦手になりやすい仕事だと思います。
その戦略の下書きまでは、会社の情報をAIが自分で読みに行ける状態にしておけば、AIでかなり速く作れます。ただし、最初のバージョンには事実の誤りがありました。この記事では、できた提案書の中身、AIがやったこと、短く済んだ理由、誤りを防いだ検査の仕組み、自社で始めるときに整えるものを順に書きます。
できあがった提案書は、社内向けのものをほぼそのまま載せています。
短い指示で、SNS運用の提案書が1本できた
できあがったのは、Webページ1枚の提案書です。最初に「結論」を3つ置き、そのあとに、いまの状況、SNSが受け持つ場面、SNSごとの役目、コンテンツ10案、始め方、効果の見方、社内で決めておきたいことが続きます。
頼んだ背景は、アディザネージのサイトの検索からの訪問が戻り始めたことです。次の課題はSNSだと考えて、こう頼みました。
まず10案ぐらい出してもらいたいんだけど。具体的にはレンタルと購入の発注が来るようなコンテンツで、かつフォローもしておいた方がいいかなみたいなところなので、その辺ちゃんと事業を把握した上でちょっと提案書を作ってください。
この前に、YouTube・Facebook・X・TikTok・Instagram をどう回すかを考えたい、という話を少ししただけです。
提案書の冒頭に置かれた結論は、SNSは発注を決める場所ではなく、発注の前後を受け持つ場所というものでした。LEDビジョンは、投稿を見た瞬間に「借りよう」と決まるものではありません。SNSの役目を「探す前に使い方を知ってもらう」「探したあとに実績を確かめてもらう」「次に要るときに思い出してもらう」の3つに絞っています。

10案は、どれも同じ型でそろっています。案ごとに「フォローしておく理由」「問い合わせへの誘導の文言」「素材と撮り方」「難しいところ」が書いてあり、投稿を見た人が進むサイトのページまで決めてあります。

SNSが苦手になりやすいのは、アディザネージだけではないようです。中小企業庁の「2026年版 小規模企業白書」では、SNSを使った広告・マーケティングを「活用していないが、関心はある」小規模事業者が、BtoCで26.0%、BtoBで27.9%でした。
AIは事業を自分で読みに行き、数字も自分で集めた
使ったのは、Anthropic の Claude Code です。パソコンの中のファイルを読みながら作業するAIのツールで、短い指示のあと、事業の中身を自分で調べるところから始めています。進め方は次のとおりです。
事業を読み込む
別のAIに、サイトの導入事例107件・製品・PR動画・3Dのブース・ゲーム・ブログ・キーワードのデータを読ませて、要約させる
数字を自分で取る
Google アナリティクスのSNSからの訪問数、YouTube のチャンネルの登録者と再生回数を集める
外の根拠を探す
総務省の調査から、発注を決める30〜50代のSNSの利用率を拾う
決まりに沿って組む
結論を先に置き、案ごとに誘導の文言・見た人が進むページ・難しいところを書く形で、提案書にする
別のAIに検査させる
経営者の立場で読ませ、不合格を出せる形で点検させる
直して表示を確かめる
見つかった誤りと抜けを直し、パソコンとスマホの幅で表の崩れを直す
数字を自分で取ったことは、提案の中身にも効いています。いまのSNSの状況を、提案書では次のように並べました。

YouTube のチャンネルでは、横長の事例の動画より、縦の短い動画(ショート)のほうが見られていました。最近の横長の動画30本の再生は、多いものでも230回です。
一番見られたショートは474回再生されていて、この数字が「中心は現場で撮る縦の短い動画にする」の根拠になりました。社内にあるデータが、そのまま戦略の根拠になった形です。
SNSごとの役目も、年代別の利用率と並べて決めています。

指示が短くて済んだのは、会社の情報とルールが先にあったから
できた提案書を見て、なかなかいい提案だと思いました。同時に、こんなに短い指示でここまでできるのは、AIへの指示ファイルに何か特徴があるのだろうか、とも感じています。
そこで、AIに理由を聞いてみました。AIの説明では、一番の理由はルールが提案書の形と、最低限守るべき品質を決めていたことでした。AIが仕事を始める前に、会社の情報と、仕事の進め方のルールを読める状態にしてあったことが効いた、とAIは説明しています。
AIの世界では、AIに渡す情報のことを「コンテキスト」と呼びます。Claude を作っている Anthropic は、AIに渡す情報は多ければいいわけではなく、望む結果を出しやすい、量が少なく中身の濃い情報を選んで渡すことが大事だと説明しています。
今回、AIが読める場所にあったのは、次のようなものです。
AI
指示は短い
会社の情報
サイト・導入事例・製品
社内の数字
アクセス解析の数字
事業の方針
どのサービスにつなぐか
文章のルール
結論を先に書く など
書いてはいけないこと
確かめていない条件・表現
どれも、この提案書のために用意したものではなく、日々のサイト運用のためにAIに読ませているもの
AIが挙げたルールと、それが提案書のどこに表れたかを並べると、次のとおりです。
| AIに読ませていたルール | 提案書に表れたところ |
|---|---|
| 作る前に、目的・読み手・伝えることを決める | 最初に結論を3つ置き、発注する人の場面から組み立てた |
| 集客の施策を、手段の名前だけで勧めない | 10案すべてに、誘導の文言・見た人が進むページ・難しいところが付いた |
| 見出しに書いた中身は、本文で必ず出す | 各案が「何をどう撮るか」の絵が浮かぶところまで書かれた |
| 確かめていないことを、言い切らない | レンタル料金に設営費が含まれるか、などを「込み」と書かなかった |
| 社内のシステムにあるデータは、自分で取りに行く | 訪問数・再生回数を、人に聞かずに集めた |
一方で、ルールとは関係なく、AIが自分で考えた部分もある、というのがAIの答えでした。「発注の前後にある3つの場面」という整理や、「フォローしてくれるのは、案件ごとに何度も発注するイベント会社や代理店の人」という見立ては、AIが事業のデータから出したものです。ルールが決めていたのは形と質までで、中身の考えはAIが出していたことになります。
AIの答えの締めは、指摘をルールにして同じ間違いを止める流れが回っていることが一番効いている、というものでした。AIそのものが覚えて賢くなるわけではなく、AIが毎回読むルールが増えていくので、結果として同じ間違いが減っていきます。
この「会社の情報をAIが読める形に整える」ところは、まだ多くの会社で手つかずのようです。総務省の「令和8年版 情報通信白書」では、生成AIが社内のデータを参照できるようにしている日本の企業は24.5%で、中小企業に限ると17.7%でした。
最初のバージョンは、事実を4か所間違えていた
AIが最初に書いた提案書は、そのまま出せる状態ではありませんでした。出す前に別のAIに検査させたところ、事実の誤りが4か所と、大事な案の抜けが1つ見つかっています。
検査では、別のAIに経営者の立場で提案書を読ませ、不合格を出してよいことにしました。判定は「要修正」です。
- 事実の誤りFacebook の利用率の順位、ショート動画の本数、動画が付いている事例の件数、サイト全体の訪問数の4か所
- 抜けていたもの「買うか借りるか」を判断できる案が無かった(発注する人が最初に迷うところ)
直したあとの提案書には、「この使い方なら、買う?借りる?」という案が4つ目に入っています。
もう1つ、検査を通ったあとにも、僕が見て直してもらった箇所があります。結論の中で、3つの項目を番号つきで1つの段落に続けて書いていて、読みにくかったところです。AIは直したうえで、同じ書き方をしたら自動で見つけて止める仕組みを、文章を点検するプログラムに足しました。ルールにも1行書き足しています。
AIの誤りは、渡す材料と検査の仕組みで減らしやすくなります。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」でも、手元の資料を参照させて答えさせる方法に、誤りを抑える効果が期待されると書かれていました。
一方で、同じガイドラインは、資料に頼りすぎると答えが似通いやすく、独創性が要る仕事には向かない場合もあると注意し、生成AIを使うときに人の判断を挟む対策も求めています。
今回も、「発注の前後にある3つの場面」のような中身の考えは、資料をなぞるだけでなくAIが組み立てたもので、それを別のAIと僕が確かめました。Claude Code の公式のガイドも、AIに自分の作業を確かめる手段を持たせることと、作ったAIとは別のAIに結果を点検させることを勧めています。
AIに作らせる量が増えるほど、作る役とは別に、確かめる役を置くことが大事になると思います。
AIが書く
会社の情報とルールを読んで、最初のバージョンを作る
別のAIが検査する
読み手の立場で読み、不合格を出せる形で、事実と抜けを点検する
人が見て指摘する
見にくい・違う、と感じた所を伝える
指摘をルールにする
同じことを二度言わずに済むよう、ルールに書き足し、自動で見つけられるものは点検のプログラムに足す
AIそのものが覚えるのではなく、AIが毎回読むルールが増えていくことで、同じ間違いが減っていく
ほかの会社でも、作る役と確かめる役を分けている
提案書のような戦略作りをAIで進める例は、大きな会社でも出てきました。どれも、会社の情報をAIに渡し、作る役と確かめる役を分けています。
| 例 | AIに渡したもの | 作る役 | 確かめる役 |
|---|---|---|---|
| 今回のSNS運用の提案書 | サイト・導入事例・アクセス解析の数字・会社のルール | Claude Code | 別のAI(経営者の立場)と僕 |
| 三井住友銀行の提案書作り | 提案先の会社の財務・非財務の情報 | 情報を集めて分析するAIと、仮説とストーリーを組むAI | 品質と事実を確かめるAI |
| Anthropic の広告文作り | ブランドの言葉づかい・広告文の書き方のファイル、キャンペーンのデータ | Claude Code | 担当者(出す前に人が確認) |
三井住友フィナンシャルグループと三井住友銀行は、2026年4月に、生成AIで提案書を作る仕組みの導入を発表しました。役割の違うAIを組み合わせ、品質と事実を確かめる役を別に置いています。
Anthropic の社内では、プログラミングの経験がないマーケティングの担当者が、ブランドの言葉づかいや広告文の書き方をAIが読むファイルにまとめ、広告文の案を作らせている例があります。同社の発表では、1本あたりの作業が約30分から約30秒に縮んだそうです。それでも、AIの案は出発点で、伝わり方は担当者が見て調整し、出す前の確認も人がしています。
自社で始めるなら、最初に整える3つ
SNSの戦略作りをAIで速くしたいなら、AIに頼む前に、次の3つを整えるところから始めるのがいいと思います。簡単になるのは、整えたあとです。
手間がかかるのは、提案書を作る場面より、この準備のほう。どの情報をどこに置くか、何をルールにするか、検査を誰にどう頼むかは、会社ごとに違います。
会社の情報を、AIが読める場所にまとめる
自社のサイト、実績の一覧、商品やサービスの説明、よく聞かれる質問を、AIが毎回読める場所にまとめます。紙やバラバラのフォルダにあるものは、文書にするところからです。
使うAIによって、まとめる場所が違います。ChatGPT なら「プロジェクト」を1つ作り、そこにファイルを入れて、指示を書いておけます。Gemini なら「Gem」を作り、指示とファイルを持たせられます。Claude Code なら、パソコンの中の1つのフォルダにまとめて置けば読みに行きます。
社内の数字は、Google アナリティクスなどの画面から、月ごとの数字を表にして書き出して入れておくと、AIが提案の根拠に使えます。今回は、サイトそのものとアクセス解析の数字をAIが読めました。この準備が無ければ、AIは一般論で提案書を書くしかありません。
指摘したことを、ルールに書き足していく
AIが出した答えを見て「違う」と思ったら、その場で直させるだけでなく、次から同じことをしないよう、ルールとして書き足します。ChatGPT のプロジェクトや Gemini の Gem なら、指示の欄に足していく形です。
Claude Code では、このルールを CLAUDE.md というファイルに書いておくと、作業を始めるたびにAIが読み込みます。公式の説明でも、AIが同じ間違いを2回したときや、前と同じ説明をまた入力しているときが、書き足すタイミングの例に挙がっています。
僕が使っているルールのファイルを、複数のAIで共有する仕組みは、別の記事で紹介しています。
作る役とは別に、確かめる役を置く
AIが作ったものは、出す前に、作ったのとは別のAIか人が、読み手の立場で確かめます。今回は、別のAIに「不合格にしてよい」と伝えて検査させました。
ただ、Claude Code の公式のガイドにもあるとおり、問題を探すよう頼むと、出来が良くても何かしら指摘は出てきます。事実の誤りと、大事な抜けに絞って見てもらうと、直す手間が増えすぎません。
Google の Gemini のヘルプにも、Gemini が作ったものを公開・使用する前に、自分で確かめて判断するよう書かれていて、AIを提供している側も確かめる工程を前提にしているわけです。
同じことを試したい人へ
試すなら、ChatGPT のプロジェクトか Gemini の Gem に、自社のサイトのURLと、実績の一覧・サービスの説明・よく聞かれる質問のファイルを入れてから、次の文を貼ってみてください。最初はサイトのURLだけでも始められます。
私の会社のSNS運用について、提案書を作ってください。
【まず読んでほしいもの】
・ 会社のサイト(URL: )
・ 入れておいた資料(実績の一覧・商品やサービスの説明・よく聞かれる質問など)
【作り方の決まり】
1. 最初に結論を3つまで書き、そのあとに理由と中身を書いてください
2. SNSごとに、役目・出すもの・注意することを書いてください
3. 投稿の案は、1つごとに「フォローしてもらえる理由」「問い合わせへの誘導の文言の例」「見た人が進むサイトのページ」「難しいところ」を書いてください
4. 数字を使うときは、どこから取ったかを書いてください。確かめられないことは、言い切らずに「確認が必要」と書いてください
できた提案書は、新しいチャットを開いて貼り、次の文を送って確かめてもらいます。作ったAIとは別の会話で見てもらうのがポイントです。
次の提案書を、中小企業の経営者の立場で読んで、出す前に直すべき所を挙げてください。
・ 事実の誤り(数字・名前・サービスの内容)
・ 読む人が一番迷うところに答える案が、抜けていないか
・ 確かめられていないのに言い切っている所
細かい言い回しより、この3つを優先してください。直すべき所が無ければ「無し」と書いてください。
(ここに提案書を貼る)
試すときは、まだ公開していない計画や、お客さまの名前・連絡先などは入れないようにしてください。
まだ分かっていないこと
この提案書はまだ実行しておらず、SNSでフォローが増えるか、お問い合わせにつながるかは、これから確かめるところです。
始める前に社内で決めることも、6つ残っています。編集と投稿を誰が受け持つか、YouTube をどの名前で作るか、広告を使うか、申込書に掲載の確認欄を入れるか、顔を出して話すスタッフがいるか、Facebook をどうするか、です。
AIが作れるのは戦略の下書きまでで、担当を決める・現場で撮る・続けるのは、人の仕事として残ります。結果が出たら、この記事か続きの記事で報告します。
SNSで何を見て効果を判断するかは、SNS運用の始め方の記事でも書いています。
アディザインに相談するなら
会社の情報とルールを整える準備は、慣れないうちは手間がかかります。自社の情報をAIに持たせて、提案書や戦略作りに使えるようにしたい場合は、課題解決型セミナーが合っていると思います。自社の業務の課題をそのまま題材にして、AIでの解決方法を試作まで進める内容なので、「会社の情報とルールをどう整えるか」も課題として持ち込めます。
社内でまずAIの使い方を知るところから始めたい場合は、AI基礎講座があります。講座の全体はAI活用・セミナーのページで見られます。
仕組み作りそのものを任せたい場合は、Webアプリ・システム開発のページにあるAI開発代行と引き継ぎが合うと思います。SNSの運用そのものを任せたい場合は、SNS運用代行のページを見てください。どのサービスも、最新の内容と料金は各ページで確かめられます。
よくある質問
Q. AIが作ったSNSの提案書は、そのまま使えますか?
そのままは使わないほうがいいと思います。今回も、最初のバージョンには事実の誤りが4か所ありました。作ったのとは別のAIや人が、読み手の立場で確かめてから使ってください。
Q. 会社の情報は、どれくらい用意すればいいですか?
最初は、自社のサイトと、実績の一覧、よく聞かれる質問くらいから始められます。AIが出した答えを見て「これが分かっていれば」と感じたものを、少しずつ足していく形で十分です。
Q. 社内の情報をAIに渡しても大丈夫ですか?
使うAIのサービスの設定と利用規約によって扱いが変わります。社内でどの情報まで入れてよいかを先に決めておくと安心です。決め方は、生成AIの社内ルールの記事で書いています。
Q. SNS以外の提案書にも使えますか?
使えます。今回の考え方は、会社の情報とルールを渡して、作る役と確かめる役を分けるというもので、営業の提案書や企画書にもそのまま当てはまります。