販促で使うARは、何にかざして何を見せるかを先に決め、そのあとでアプリ不要のWeb ARで作るか、作成サービスで自作するか、制作会社に頼むかを選ぶ、という順番で作ります。
作成サービスから選び始めると、そのサービスで作れる物に企画を合わせることになりやすいからです。チラシの上に動画を流すだけなら、無料から始められる作成サービスで形にできます。一方、商品の3Dを作り込む、イベントの会場で何か所にも演出を置く、といった場合は、素材作りと動作の確認に手間がかかるので、頼むほうが進めやすくなります。
たとえば、焼き菓子の箱にかざすと焼き上がりの様子が流れるARなら、必要なのは箱のデザインのデータと、短い動画の2つだけです。
この記事では、作る手順を6つの段階に分けて、それぞれで決めることと準備する素材、2026年10月時点で提供中の作成サービス、かざしてもらうための工夫とうまくいかない例まで書きました。ARとは何か、VR・MRとの違いは「ARとは?VR・MRとの違いと、販促で使う場面」にまとめています。ホームページ・印刷物・映像・ARを一緒に手がけている会社の目線で書いています。
ARは、かざす物と見せる中身を決めてから作り始める
ARの作り方は、プログラムを書くところからではなく、何にかざすと何が起きるかを1つ決めるところから始まります。作成サービスや依頼先を選ぶのは、手順の4番目で構いません。
全体の流れは次のとおりです。
目的を決める
誰に、何を知ってもらいたいか
かざす物を決める
パッケージ・チラシ・ポスター・POP・会場の看板など
見せる中身を決める
動画・3D・フォトフレーム・くじ引きなど
作る
作成サービスで自作するか、制作会社に頼む
試す
複数のスマホ、本番に近い明るさと通信で
公開して案内する
QRコードと、かざしたくなる案内を紙面に載せる
お弁当と同じで、詰める前におかずの数と大きさを決めておかないと、箱に入りません。かざす物が名刺なのかA1のポスターなのかで、見せられる中身も、置ける案内の量も変わります。
作り方は、アプリ不要のWeb ARか、アプリで見せるARかで分かれる
見る人の手間は、QRコードからブラウザで開くWeb ARのほうが、アプリを探して入れる手順がないぶん少なくなります。
アプリ型は、アプリを入れてもらえれば、読み込みの速さや表現の自由度で有利になることがあります。ただ、チラシを見た人に「アプリをダウンロードしてから見てください」とお願いすると、その場で見てもらうまでの手順が1つ増えます。
| 作り方 | 見る人がすること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| Web AR(アプリ不要) | QRコードを読み取り、開いたブラウザでカメラの使用を許可して、かざす | チラシ・パッケージ・店頭など、初めて見る人に一度だけ体験してもらう販促 |
| アプリ型(作成サービスのアプリ) | 作成サービスのアプリを入れてから、アプリのカメラでかざす | アプリを入れてもらう理由が別にある場合(継続して使う会員向けなど) |
| 自社アプリに組み込む | 自社のアプリを開いて、AR機能を使う | すでに自社アプリがあり、使っている人が多い会社 |
自社アプリに組み込む場合は、AppleのARKitやGoogleのARCoreといった開発用の仕組みを使ってプログラムを書くことになり、販促の担当者が自分で作る範囲を超えます。この記事では、Web ARと作成サービスを中心に書きます。
自分で作るなら、無料から始められる作成サービスがある
動画を紙面に重ねる、3Dの商品を部屋に置いて見せる、といった基本的なARには、作成サービスに素材を登録するだけで公開まで進められるものがあります。以下は2026年10月6日に、各サービスの公式ページで提供中であることを確かめたものです。
| サービス | できること | 料金の公表(2026年10月6日確認) |
|---|---|---|
| LESSAR(Cloud CIRCUS) | アプリ不要のWeb ARを作る。印刷物の絵柄を見分ける型と見分けない型、フォトフレーム、スタンプラリー、くじ引き | 期限なしのフリープランあり。有料プランの金額は公式ページに記載なし |
| COCOAR(Cloud CIRCUS) | 専用アプリで見るARを作る。動画・画像・3Dの登録、フォトフレーム、スタンプラリー | 期限なしの無料プランあり。有料は必要な分をあとから課金する形で、金額は記載なし |
| MyWebAR | ブラウザで見るARを作る(英語のサービス) | 無料プランは年100回の閲覧まで・商用利用不可。商用はProプラン月39ドル(年払いなら月25ドル) |
| Zapworks | アプリ不要のWeb ARを作る(英語のサービス。開発者向けの機能も多い) | 14日間の無料体験あり。商用はProプラン月315ドル |
3Dの商品を「置いて見せる」だけなら、OSに入っている仕組みも使えます。iPhoneやiPadのSafariでは、USDZという形式の3DデータをAR Quick Lookで現実の空間に置いて見られます。Androidでは、glTF・GLBという形式の3DデータをScene Viewerで同じように表示でき、ARCoreに対応した端末が前提になります(どちらも2026年10月6日確認)。
ホームページにこの表示を組み込むには、Googleが無料で公開しているmodel-viewerというライブラリ(Webページに組み込んで使うプログラム)を使う方法があり、iPhoneの3Dデータは、Appleの無料アプリReality Composerで作れます(2026年10月6日確認)。ただし、ホームページへの組み込みには、HTMLを編集できることが前提になります。
終わったサービスを選ばないように、公開期間まで確かめる
ARの作成サービスは、ここ数年で終了するものが相次いでいます。ネットのまとめ記事には、終了したサービスが今も載っていることがあるので、作る前に公式ページで確かめてください。
- 8th WallWeb ARの代表的なサービスでしたが、2026年2月28日でアカウントの作成・ログイン・編集が終わり、公開済みの作品も2027年2月28日以降は見られなくなると発表されています(Niantic Spatial、2026年10月6日確認)。
- Adobe Aero2025年11月6日に配布が終わり、12月3日にサービスが止まりました(Adobe、2026年10月6日確認)。
- Meta SparkInstagramやFacebookのARエフェクトを作るツールで、2025年1月14日に第三者向けの提供を終えています(Meta Spark、2026年10月6日確認)。
パッケージのように何年も店頭に並ぶ物にARを付けるなら、サービスが終わると、印刷済みのQRコードの先が見られなくなります。作成サービスを選ぶときは、使える機能だけでなく、公開を続けたい期間と、そのあいだの運用の費用まで見ておくと安心です。
作る手順ごとに、決めることと準備する素材
それぞれの段階で決めることを、上の図の順に書きます。準備する素材は、かざす物のデータと、見せる中身の2つが軸になります。
目的を決める
ARを使うと、紙面には載せきれない情報を、動きで足せます。そのうえで「誰に、何を知ってもらうか」を1つにしぼります。
目的は、紙面の写真や文章では伝わりにくいことから選ぶと決めやすくなります。使い方が分かりにくい商品なら使い方の動画、大きさが伝わりにくい家具なら部屋に置ける3D、という具合です。企画の考え方は「ARとは?VR・MRとの違いと、販促で使う場面」の「始める前に決めること」でも取り上げています。
かざす物を決める
かざす物は、パッケージ、チラシ、ポスター、名刺、店頭のPOP、会場の看板などから選びます。印刷物の絵柄を認識して映像を重ねる型では、その絵柄の印刷データが素材になります。
絵柄によって、見分けやすさが変わります。白い余白が大きいデザインや、同じ模様のくり返しは、スマホが認識しにくいことがあります。これから刷る物なら、デザインの段階でARのことも一緒に決めておくと、作り直しが減ります。
見せる中身を決める
見せる中身は、動画、3Dのモデル、写真が撮れるフォトフレーム、くじ引きのような参加型の仕掛けなどです。すでにある会社紹介動画や商品動画を使うなら、素材作りの手間は軽くなります。
3Dを新しく作る場合は、商品の形や素材感をどこまで作り込むかで、手間が大きく変わります。動画を新しく作るときの費用の見方は「会社紹介動画の費用はいくら?」にまとめています。
作る
作成サービスで作る場合は、かざす物の画像と、見せる動画や3Dを登録し、どの絵柄で何を出すかを結び付けます。制作会社に頼む場合は、ここまでに決めた目的・かざす物・見せる中身を1枚のメモにしておくと、相談がまとまりやすくなります。
試す
作ったARは、公開する前に、iPhoneとAndroidの両方、できれば新しい機種と数年前の機種で試してください。スマホの機種やOSによって、動き方や読み込みの速さが違うことがあります。
本番の場所に近い条件で試すことも大事です。店内の照明が暗い、ポスターが光を反射する、会場に人が多くて通信が混む、といった条件では、机の上で試したときより見分けにくく、読み込みも遅くなります。
公開して案内する
公開したら、QRコードを紙面や売り場に載せます。ここで終わりにせず、かざしたくなる案内をどう作るかが、次の章の話です。
かざしてもらえないARにしないために、紙面と会場で気をつけること
ARは、作っただけでは見てもらえません。お客さまはSNSやテレビ、ほかのお店の広告など、ほかに見るものが多いので、かざす理由が紙面から伝わらないと、QRコードがあることにも気づかれないまま終わりやすいです。
かざしたくなる中身を、作り込んで用意する
QRコードの横に「かざすと動画が見られます」と一言書く程度では、忙しい人はまず手を止めません。かざす体験そのものに、見たくなる中身を用意します。
- 続きが見られる焼き菓子の箱なら、かざすと焼き上がりの様子と、季節ごとのおいしい食べ方が見られる。紙面には写真の一部だけを載せ、QRコードの横に「この箱にかざすと、焼き上がりまでの様子が見られます」のように、何がどこで見られるかを具体的に書く
- その場で得をするかざした人だけが使えるクーポンや、次回の来店で使える特典を出す
- 参加する楽しさくじ引きを1回引ける、会場の数か所をめぐってスタンプを集める、フォトフレームで一緒に写真を撮れる
- 自分に当てはめたくなる家具を自分の部屋に置いて大きさを確かめられる
景品を付けるときは、景品表示法で景品の額に決まりがあります。くじ引きを入れる場合は、企画を決める前に消費者庁の景品規制の説明を確認してください。景品目当ての人ばかりが集まって、本来来てほしい方に届かない、ということも起きるので、景品と商品の関係も考えておきたいところです。

うまくいかない例を先に知っておく
よく起きるのは、次のような場面です。
- かざされないQRコードが紙面の端に小さく載っていて、何が見られるか分からない。案内が、売り場で立ち止まれない通路に置いてある
- 読み込みが遅い動画のデータが重く、開くまでに時間がかかって、途中で閉じられる。動画は短く、軽くしておく
- 通信がない・弱い地下の会場や山の中の施設、人が集中する日のイベント会場では、つながりにくいことがある。無料の通信が使える場所なら、その案内も一緒に載せる
- カメラの許可で止まるWeb ARは、ブラウザがカメラを使ってよいかを聞いてきます。ここで「許可しない」を押すと見られません。ブラウザがカメラを使うにはHTTPSで公開されたページであることと、本人の許可が必要とされています(MDN Web Docs、2026年10月6日確認)。案内に「カメラの使用を許可してください」と書き、うまくいかないときの直し方(AndroidのChromeのカメラ設定など)へ案内しておくと親切です
- 公開期間が切れる運用の費用の支払いを止めたり、作成サービスが終わったりすると、印刷済みのQRコードの先が見られなくなる。印刷物が出回る期間と、ARを公開しておく期間を合わせる
かざした先で、次に何をしてもらうかを決める
動画を見て「いいな」と思った人が次に何をすればいいか分からないと、そこで終わります。映像の最後や画面の下に、購入・来店予約・お問い合わせの案内を置き、その先のホームページで自社の強みが伝わるようにしておいてください。
集客と、問い合わせや購入は別の話です。かざした先のページが薄いままなら、かざした人がそこで離れてしまうので、ARより先にそちらを整える必要があります。案内の載せ方は「ホームページ集客の方法一覧」でも取り上げています。
自分で作るか頼むかは、作り込みと公開期間で決める
すでにある動画を、1つの印刷物に重ねるだけなら、作成サービスで自作しても十分に形になります。3Dを作り込む、会場の何か所にも置く、何年も公開を続ける、といった場合は、制作会社に頼むほうが進めやすくなります。
いくつかの質問に答えると、今の状況に合う進め方が分かります。
あなたの場合
まず企画から
何にかざして何を見せるかを1つ決める
「ARは、かざす物と見せる中身を決めてから作り始める」の章を読む
あなたの場合
自作から試せる
無料から始められる作成サービスで、まず1つ作って試す
「自分で作るなら、無料から始められる作成サービスがある」の章を読む
あなたの場合
頼むと進めやすい
素材作りと複数の端末での確認まで、まとめて相談する
「アディザインに相談する場合」の章を読む
自作で始めた場合も、テストの段階で「見分けにくい」「読み込みが遅い」が解決しないときは、印刷物のデザインや動画の作り方まで見直す必要が出てきます。印刷物と映像の両方を直すことになるので、自作を続けるか、両方を扱える制作会社に頼むかを、この段階で考え直すことになります。
アディザインに相談する場合
アディザインのARコンテンツ制作は、アプリのインストールが要らない、ブラウザだけで動く形式に対応しています。かざす対象の印刷物と、ARで流す映像を、どちらも自社で作れるので、デザインの段階から認識しやすい絵柄を一緒に決められます。
活用例と制作の流れはARコンテンツ制作のページで見られます。印刷物のデザインから相談したい場合はグラフィックデザイン、ARで流す映像から相談したい場合はデジタル動画制作のページをご覧ください。内容と料金は、それぞれのページで最新のものを確認してください。
よくある質問
Q. ARは無料で作れますか?
作れます。LESSARやCOCOARには期限のない無料プランがあり、動画を紙面に重ねるような基本的なARを作れます(2026年10月6日確認)。ただし、無料プランでは使える機能や閲覧の回数、商用での利用に制限がある場合があるので(たとえばMyWebARの無料プランは年100回の閲覧まで・商用利用不可)、販促で多くの人に見てもらうなら、有料プランの条件も確かめてください。
Q. プログラミングができなくてもARは作れますか?
作成サービスを使えば、プログラムを書かずに作れます。かざす物の画像と、見せる動画や3Dを登録して結び付ける操作が中心です。自社のアプリに組み込む場合は、ARKitやARCoreを使った開発が必要になります。
Q. Web ARとアプリのAR、どちらを選べばいいですか?
チラシやパッケージを見た人に一度体験してもらう販促なら、アプリを入れる手間がないWeb ARが第一の候補になります。アプリを入れてもらう理由が別にある場合は、アプリ型も選択肢になります。
Q. 3Dのモデルはどうやって用意しますか?
商品の3Dを新しく作るか、すでにある3Dのデータを使います。LiDARセンサーを持つiPhone 12 Pro以降の機種や、iPad Pro(第5世代以降)なら、AppleのReality Composerで実物を撮影して3Dを作る方法もあります(2026年10月6日確認)。形や質感を細かく見せたい商品は、作り込みに手間がかかるので、制作会社に相談するほうが確実です。
Q. 作ったARは、どのくらいの期間公開できますか?
作成サービスのプランや制作会社の運用の条件しだいです。有料プランや制作会社の運用では、公開している間、月ごとの費用がかかることがあります。サービスそのものが終わると見られなくなるので、印刷物が出回る期間に合わせて、公開期間と費用を最初に確かめておいてください。