AIで業務効率化を始めるなら、毎週くり返していて、AIの答えを人が直せば仕上がり、社外に出せない情報を入れずに済む仕事から選ぶと進めやすくなります。会議の議事録、メールやお知らせ文の下書き、Excelの並べ替えや転記、ホームページのブログやSNSの更新は、この条件に当てはまりやすい仕事です。
AIのツールはもう手に入りやすくなっていて、止まりやすいのは「どの仕事に使うか」を決めるところなんですよね。商工中金が2026年1月に中小企業へ行った調査(2026年3月公表・2026年9月24日確認)でも、生成AIの導入・推進の課題や導入しない理由として一番多く挙がったのは「具体的な活用場面が不明」(35.6%)でした。
仕事が合っていれば目に見えて時間が減ることもあり、北海道当別町では、会議の文字起こしをAIで要約する形に変えて、2〜3時間かかっていた議事録づくりが30分ほどで済むようになったと報告しています。
この記事では、AIに向いている仕事の3つの条件と、実際に時間が減った仕事の例を「AIに渡すもの・返ってくるもの・人が確かめること」の形で紹介します。あわせて、AIを使う先として見落とされやすいホームページの運用を、グループ会社での実例(アクセスと問い合わせの変化)で紹介します。最後に、自社の仕事を洗い出して最初の1つを決める手順と、最初の1か月の進め方までまとめました。
誰から使い始めるかは「AIの社内導入は何から始める?」、AIに入れてよい情報の決め方は「生成AIの社内ルールの作り方」に書いています。AI研修と導入支援をしている会社の目線でまとめました。
AIで効率化しやすい仕事には、3つの共通点があります
向いているのは「くり返す」「下書きでよい」「入れてよい情報で完結する」の3つがそろう仕事です。どれか1つでも欠けると、手直しや確認に時間を取られて、思ったほど楽になりにくくなります。
毎週くり返している
1回きりの仕事にAIを使うと、頼み方を考える時間のほうが長くなりがちです。毎週の議事録や毎月の報告書のように同じ形でくり返す仕事なら、一度うまくいった頼み方を次からそのまま使えます。
毎朝の弁当も、毎日入る卵焼きの段取りが決まると全体が早くなります。AIも同じで、頼み方の型を1回作れば、あとは回数の分だけ時間が戻ってきます。
AIの答えを「下書き」として使える
AIは、もっともらしい間違いを返すことがあります。なので、最後に人が読んで直す前提の仕事から始めるのが安全です。
議事録や文章の下書きなら、読めば間違いに気づけます。逆に、AIが出した計算結果や判断をそのまま取引先へ送るような使い方は、確かめる手順が決まるまでは避けたほうがいいでしょう。
社外に出せない情報を使わずに済む
AIに入れてよい情報かどうかは、会社のルールで決めておく必要があります。お客さまの個人情報や取引の条件を入れないと進まない仕事は、ルールが決まるまで後回しにしてください。
同じ「議事録」でも、社内の段取りの会議とお客さまとの商談とでは、含まれる情報が違います。仕事の名前ではなく、中身を見て判断するのがコツです。情報の分け方は「生成AIの社内ルールの作り方」で詳しく書いています。
実際に時間が減った仕事の例
商工中金の同じ調査では、会社として生成AIを導入しているか、社員の利用を勧めている中小企業のうち74.0%が「メール/報告書/議事録の作成・要約」に使っていました。ここでは、そうした事務の仕事で時間が減った例を、総務省の事例集に載っている自治体の報告から5つ紹介します。
役所の事務は、議事録・文書・Excelなど会社の事務と重なる部分が多く、削減できた時間も自治体自身が公表しているので、自社に置き換えて考えやすい例です。
どの例も、AIに渡すもの・返ってくるもの・人が確かめることの3つに分けて書きました。自社で試すときも、この3つが言えるかどうかが、始められるかの目安になります。
会議の議事録(北海道当別町)
当別町は、会議の音声を文字にするAIと、文章を要約するAIを組み合わせて議事録を作っています。導入前は2〜3時間かかっていた作業が、30分ほどで済むようになったと職員が実感しているそうです。
- AIに渡すもの会議の録音を文字に起こした文章
- 返ってくるもの決まったこと・宿題・次回の予定を整理した議事録の下書き
- 人が確かめること人の名前・数字・日付の聞き違いと、決定事項が発言の意図どおりに書かれているか
会社なら、社内の定例会議や打ち合わせの記録がそのまま当てはまります。
アンケートや意見メールの仕分け(大分県別府市)
別府市は、約2,600件の市民アンケートの自由記述を、生成AIとRPA(パソコンの操作を自動でくり返す仕組み)で分類しました。職員一人だと2週間程度かかる作業が、2日間程度に縮まったと報告しています。市民からの意見メールを自動で要約・分類する使い方も、実際の業務に取り入れています。
- AIに渡すもの自由記述の回答やメールの本文
- 返ってくるもの内容ごとに分けた一覧と、それぞれの要約
- 人が確かめること分け方の誤り。別府市も、AIの回答内容は必ず確認するよう職員に求めています
会社なら、お客さまアンケートの自由記述や、問い合わせメールの内容別の集計に置き換えられます。
あいさつ文・メール・SNS投稿の下書き(愛知県日進市・静岡県湖西市)
日進市は、企画書の案、あいさつ文、SNS投稿文、メール文の作成にAIを使っています。湖西市は、2023年2月にSNS投稿文の作成から始めて、新しいイベント名の案出しや、システムを発注するときの仕様書の文案へと使い道を広げました。
- AIに渡すもの誰に向けた文章か、書き手の立場、入れたい内容、文字数
- 返ってくるものそのまま手直しできる文章の案
- 人が確かめること日付・金額・固有名詞が正しいか、自社らしい言い回しになっているか
日進市は、職員が頼み方に迷わないように独自の「プロンプト集」(AIへの頼み方の見本集)を作りました。情報システムの担当だけでなく、実際に仕事をしている課の意見も入れたことで、使いやすくなったそうです。
Excelの並べ替え・転記を自動にする(愛知県日進市)
日進市で特に効果が大きかったのは、Excelのマクロ(作業を自動でくり返す小さなプログラム)をAIに書かせる使い方でした。文章の下書きなども合わせて、令和6年度は約858時間の業務時間が減ったことが、職員へのヒアリングで分かっています。
- AIに渡すものシートの名前、何行目からデータが入っているか、どの列に何が入っているか、どうまとめたいか
- 返ってくるものその作業をするマクロ
- 人が確かめること結果が正しく並んでいるか。最初はファイルをコピーして、コピーのほうで試すと安心です
日進市のプロンプト集では、「データが何行目から入っているか」を前提として伝えると精度が上がる、と頼み方のコツまで紹介しています。会社なら、毎月いくつかの表から数字を集めて1枚にまとめる作業などが当てはまります。
手作業の確認をプログラムで自動にする(静岡県湖西市)
湖西市では、プログラミングの経験がない職員が、水道のスマートメーター(使用量を自動で送ってくる水道メーター)からデータが取れなかったときに自動で再送信するプログラムを、生成AIで作りました。1年間で約66時間が減り、職員が手で確認する必要もなくなったそうです。
- AIに渡すもの今、手作業でやっている確認の手順
- 返ってくるもの確認と再送信を自動で行うプログラム
- 人が確かめること想定どおりに動くか。会社で本番のデータに使う前には、仕組みに詳しい人にも見てもらうと安心です
毎日同じ画面を開いて、同じ項目を目で確認している作業があれば、この例が参考になります。
出典: 自治体におけるAI活用・導入ガイドブック 別冊付録 先行団体における生成AI導入事例集(総務省、令和6年7月。当別町・別府市・湖西市)、自治体DX推進参考事例集 日進市(総務省)。いずれも2026年9月24日確認。
AIを使う先として見落とされやすいのが、ホームページの運用です
「AIで何を効率化すればいいか分からない」というご相談をよくいただきます。そういうとき、私たちがまず挙げるのはホームページの運用です。
私たちがご相談を受ける会社でも、ホームページを持っていないところはほとんどありません。それでも、ブログやお知らせの更新、SNSの投稿は、忙しい時期ほど後回しになりやすい仕事なんですよね。
先ほどの3つの条件に当てはめると、ホームページの運用は3つともそろいます。
- 毎週くり返しているブログやSNSの投稿は、同じ形の作業を毎週続ける仕事です
- 下書きでよいAIが書いた下書きを、人が読んで事実や言い回しを直せば仕上がります。ブログは公開したあとでも直せる文章なので、確かめる順番も会社に合わせて決められます
- 社外に出せない情報を使わずに済むもともと公開するための文章なので、社外秘の情報を入れる必要がありません
ほかの仕事と違うのは、時間が減るというより、これまで手が回らなかった仕事に手が回るようになるところです。
グループ会社AGSで、ブログの運用にAIを組み込んだ例
AGSは、福岡でイベントの企画・制作・施工や店舗の内装を手がける、アディザインのグループ会社です。業種がら、これまでホームページにはあまり力を入れてきませんでした。ブログを書こうと思っても、現場が忙しくて続かなかったんです。
2026年8月20日にサイトをリニューアルし、同じ日から人とAIで分担してブログを書き始めました。現場の経験や読み手の役に立つ情報は人が出し、AIがその話をもとに構成と下書きを作ります。公開の前には、誤字や言い回し、書いてはいけないことが入っていないかを、決めた基準で機械とAIが検査します。人は公開された記事を読み、直してほしいところを伝える役です。ブログはあとから直せる文章なので、AGSではこの順番にしました。
1か月あまりで、公開した記事は91本になりました。
黄色の部分がブログ記事です。検索結果に表示された回数(開かれなくても、表示されれば数えます)は、始める前(6月1日〜8月10日の週)の平均が週358回で、9月(8月31日〜9月14日の週)は平均で週1,465回まで増えました。ブログ以外のページは平均で週358回から週384回とほぼ横ばいで、増えた分はほぼブログ記事によるものです。
検索からサイトを開いた回数(クリック)も、同じ期間の平均で週10回から週38回に増え、そのうち19回がブログ記事からでした。リニューアルも同じ日だったので、ブログ以外のページのクリックが増えた分には、リニューアルの影響も含まれていると考えています。
アクセスだけでなく、仕事にもつながっています。今は新しいお客さまからの問い合わせが週に2〜3件あり、そのうち週1〜2件が成約しています。依頼の中身は、イベントのスタッフ派遣や店舗の工事などです。
AGSのように、もともとホームページにあまり力を入れてこなかった業界ほど、この効果は大きいと私たちは考えています。ライバルが少ないので、検索に出る回数を増やすだけでも目に留まりやすくなるからです。そのうえで、自社の強みや他社との違いをホームページでしっかり伝えれば、新しい仕事の獲得につながる可能性は十分にあります。同じような業界の会社には、ぜひ試してほしい方法です。AGSでブログをどんな手順で回しているかは、「AIブログで検索の表示約4倍・訪問3.8倍|グループ会社の仕組み」に詳しく書きました。
AGSは仕組みを作って毎日書いていますが、最初からこの量を目指す必要はありません。週に1本、お客さまからよく聞かれる質問に答える記事から始めるだけでも、3つの条件はそろいます。下書きにかかった時間と、確かめて直した時間を分けて記録しておくと、次の章の「前と後」の比較にそのまま使えます。
自社の仕事を洗い出して、最初の1つを決める
最初の1つは、1週間分の仕事を書き出して、3つの条件で2つのグループに分けると決めやすくなります。そのうえで「1回の時間×週の回数」が大きいものを1つ選んでください。
- 1週間、自分がした仕事を書き出す付箋でも表でも構いません。仕事の名前だけでなく、1回にかかる時間と週の回数も書いておきます
- 3つの条件で2つのグループに分ける「AIに渡してみる仕事」と「今は人がやる仕事」に分けます。迷うものは、今は人がやる側に置いておけば十分です
- 時間と回数が大きいものを1つ選ぶ1回30分の仕事を週に4回しているなら、週2時間分がAIで短くできる候補になります

分けるときは、仕事の名前ではなく中身で判断します。たとえば見積りや請求書は、金額やお客さまの情報を入れるかどうかで、どちらのグループに入るかが変わります。日報も、現場のメモを文章に整える部分だけを切り出せば、AIに渡せる場合があります。
書き出すときは、次の5つの項目があると、あとで効果を測るときにも使えます。
| 書き出す項目 | 記入例 | 書いておく理由 |
|---|---|---|
| 仕事の名前 | 月曜の定例会議の議事録 | 同じ仕事をしている人と話を合わせやすくなる |
| 1回にかかる時間 | 90分 | AIを使ったあとと比べる基準になる |
| 週の回数 | 1回 | 回数が多い仕事ほど、減る時間が大きくなる |
| 使う情報 | 会議の発言。お客さまの名前が出ることもある | AIに入れてよい情報かを社内ルールと照らし合わせる |
| 仕上がりを確かめる人 | 会議の進行役 | 下書きを直す人が決まっていないと、確認が抜けやすい |
AIへの頼み方は、キーボードで打つより音声入力のほうが早く、渡せる情報も多くなります。最初の練習として試してみてください(くわしくは「AIの社内導入は何から始める?」で紹介しています)。
最初の1か月は、1つの仕事で「前と後」の時間を測る
選んだ仕事で2〜4週間試して、かかった時間を前と後で書き残しておくのがおすすめです。確認や手直しにかかった時間も含めて測ると、本当に楽になったかが分かります。
測っておく理由は、効果が見えないと続かないからです。先ほどの商工中金の調査でも、導入したあとの課題として「導入効果が測定できず、成果が見えにくい」が挙がっています。
- 1週目: 今のやり方の時間を記録するいつもどおりに仕事をして、1回ごとにかかった時間をメモします
- 2〜3週目: AIで下書きを作り、人が仕上げる下書きにかかった時間と、確認・手直しの時間を分けて記録します
- 4週目: 頼み方を1枚にまとめて渡すうまくいった頼み方を文章で残し、同じ仕事をする人に使ってもらいます
時間が思ったほど減らなかったときは、その仕事が3つの条件のどれかから外れていないかを見直してみてください。確認に時間がかかりすぎるなら「下書きでよい」が、毎回頼み方が変わるなら「くり返す」が足りていない可能性があります。
小さな会社ほど、毎日の細かい作業から始める
社員が少ない会社は、1つの仕事を仕組み化するより、文章・要約・Excelのような毎日の細かい作業にAIを使うほうが、効果を感じやすいかもしれません。
そう考える手がかりが、岡山県西粟倉村の報告です。職員の少ない自治体は一人が受け持つ仕事の種類が多いので、業務ごとにシステムを作って時間を縮めるやり方では、職員一人ひとりの効率が上がりにくいと書かれています。村では、資料の作成や要約、集計結果をグラフにするプログラムづくりなど、幅広い細かな作業にAIを使っています。
自転車でいえば、フレームを買い替える前にタイヤを替えるだけで走りが変わるのと似ています。
まず毎日の作業で手ごたえをつかみ、それでも毎回同じ大きな作業が残るなら、そこで初めて専用の仕組みを考えれば十分です。その段階ではWebアプリ・システム開発の考え方も参考になります。
もう1つ気をつけたいのは、よく使う人とそうでない人に分かれることがある点です。当別町も、よく使う職員とそうでない職員に分かれたことを課題に挙げ、うまくいった使い方を紹介する場を設けています。社内での広げ方は「AIの社内導入は何から始める?」、研修の考え方は「生成AI研修は必要?」にまとめました。
自社の仕事だけでは決めにくいとき
洗い出してみても、AIでできるのかどうか判断がつかない仕事は残ります。そういうときは、AIで解決する部分と、仕組みやルールで解決する部分を分けて考えると整理しやすくなります。
アディザインの課題解決型セミナーでは、事前に課題を伺い、「AIで解決できる部分」「仕組み(システム)で解決すべき部分」「運用ルールで解決する部分」に切り分けたうえで、実際の業務データを使ってその場で試作します。見積りや提案書の下書き、問い合わせへの返信、日報の整理などの課題をお持ちいただけます。
ホームページの更新やブログの下書きから掲載までをAIに任せる仕組みは、ホームページ制作のプランの1つとしてご用意しています。
そもそもAIで何ができるのかを社内で知るところから始めたい場合は、AI基礎講座が入口になります。どちらも1つだけのご依頼で構いません。講座の一覧はAI活用・セミナーのページにあり、最新の内容と料金は各ページでご確認ください。
よくある質問
Q. 無料版のAIでも業務効率化はできますか?
文章の下書きや要約のように、社外に出せない情報を使わない仕事なら、無料版でも十分に試せます。会社の情報を入れる場合は、入力した内容の扱いが契約の種類で変わるので、先に社内ルールで使ってよいAIを決めておいてください。
Q. AIで業務効率化すると、どれくらい時間が減りますか?
仕事の種類と頼み方で大きく変わります。自治体の報告では、議事録が2〜3時間から30分ほどに(北海道当別町)、Excelのマクロ作成などで年間約858時間(愛知県日進市)といった例があります。自社では、1つの仕事で前と後の時間を測るのが一番確かです。
Q. AIが間違えた内容を、そのまま使ってしまわないか心配です。
誰が仕上がりを確かめるかを、最初から手順に入れておくと防ぎやすくなります。AIの答えは下書きとして扱い、名前・数字・日付を人が確かめてから使う、と決めておいてください。
Q. 社員が数人の会社でも効果はありますか?
社員が少ない会社でも、文章の下書きや要約、Excelの作業など毎日の細かい作業に使えば、効果を感じやすいと考えられます。職員の少ない岡山県西粟倉村も、一人が受け持つ仕事の種類が多いことを踏まえて、幅広い細かな作業にAIを使っています。