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AI活用 2026.10.19

FDE思考とは?小さなお店でもAIで仕組みと資料を作れる

執筆:adisign

アディザイン・Web事業部の吉田です。

最近は、AIのセミナーをさせていただくことが増えて、会社にいるより、いろいろな会社さんのところへ伺う日が多くなりました。その合間の待ち時間には、これまでコワーキングスペースをよく使っていたんです。

ところが、AIが普及してからは音声入力が中心の生活にどっぷりなじんでしまい、声を出しても周りに気をつかわなくていいカラオケ屋さんが、もっぱら僕のオフィスになってきています。

では、本題に入ります。

FDE思考とは、仕事の中身をよく知っている人がエンジニアの発想を持ち、AIで仕事の流れを変えていく考え方を指します。エンジニアではないけれど、それぞれの業界で専門の知識を持った人が、AIを使っていろいろなシステムを使いこなしたり、効率化するものを作ってみたりする動きが広がっている、と僕は見ています。

こういう話は、どうしても大きな会社や、ある程度の規模がある会社の取り組みに聞こえます。

でも実際には、街のケーキ屋さんや美容室、個人で小さく事業をされている方も、AIを使えば、お金の面で手が出なかったチラシや資料、仕事の仕組みを自分で作れるようになってきました。化粧品などの事業をされている九州シグマさんも、僕がAIで作った資料をご覧になったのがきっかけで、AIの導入セミナーを受けていただくことになっています。

この記事では、FDE思考がどういう考え方か、小さなお店でAIを使って何が作れるようになったか、始めるときに何からやればいいかを、僕の仕事の実例と一緒に紹介します。

FDE思考は、仕事をよく知る人がエンジニアの発想でAIを使う考え方

FDE思考は、2026年の秋ごろから、ビジネス向けのメディアで使われ始めた言葉で、元になっているのは「FDE(Forward Deployed Engineer)」という職種の名前です。

日経クロステックの解説では、お客さまの業務や組織、社内のシステムを深く理解して課題をはっきりさせ、解決するシステムを作るエンジニアだと説明されています。2026年5月に OpenAI と Anthropic がそれぞれ FDE のチームを抱える新しい会社を作ったこともあり、注目が集まっている職種です。

職種のFDEは、エンジニアがお客さまの現場に入っていく仕事です。FDE思考はその向きを逆にして、現場で仕事をしている人のほうが、エンジニアの発想を持ってAIを使います。ここでいうエンジニアの発想とは、自分の仕事を作業の順番に分けて、毎回同じように進むところを仕組みにしていく考え方を指します。

比べること職種のFDEFDE思考
誰のことかお客さまの会社に入るエンジニア自分の仕事をよく知っている人なら誰でも
どちらへ向かうかエンジニアが現場へ行く現場の人がエンジニアの発想へ近づく
何をするかお客さまの業務に合わせてAIの仕組みを作り、定着させる自分の仕事のうち、毎回同じように進むところをAIで仕組みに置き換える

AIの会社 Anthropic が、プログラムを書くAI「Claude Code」の約40万回の利用を調べた報告でも、仕事で使うプログラムを作る作業がうまくいった割合は、ソフトウェアの仕事をしている人で34%、それ以外の人で29%と、大きな差はありませんでした。報告では、うまくいくかどうかを決めるのは、プログラミングの経験より、解きたい問題をどれだけ分かっているかだとまとめられています。

FDE思考は、小さなお店や個人の事業にも関係がある

FDE思考の話は、社内にシステムの担当がいるような会社の話に見えるかもしれません。ただ、僕が伝えたいのは、大きな会社だけの話ではないという点です。

数字で見ても、小さなお店ではAIをチラシやSNSの投稿作りに使う動きが出ています。日本政策金融公庫が2026年3月に、飲食業・美容業・理容業などの事業者3,134社に聞いた調査では、生成AIの活用に前向きな企業は28.6%で、美容業では31.3%でした。

前向きな企業が、使っている・使いたいと答えた業務は、「情報収集」と「文章の作成・要約」がどちらも66.9%、「デザイン・画像の生成・編集」が51.1%です。

使う目的では「業務効率化」の74.6%に続いて、「チラシ・SNS等の広報・集客」が59.7%に上り、実際に使っている企業の73.5%が「効果があった」と答えています。

小さなお店でAIを使って作れるようになったものは、大きく2つに分かれます。1つはチラシ・メニュー・提案資料・SNSの投稿のような、お客さまに見せるもの。もう1つは、予約の確認や毎月の集計のような、仕事を回すための小さな仕組みです。

たとえば、お店ごとに次のようなものが作れます。

お店の例お客さまに見せるもの仕事を回す小さな仕組み
ケーキ屋さん季節のケーキの紹介カードと、同じ写真を使ったSNSの投稿文ホールケーキの予約を、受け取り日ごとに一覧にする表
美容室メニューと店販商品のリーフレット、ホームページの新メニューのページ来店の間隔が空いたお客さまを一覧にして、ご案内の文の下書きまで出す表
個人の教室・工房体験会の案内チラシと、申し込みページの文章申し込みの人数と持ち物を、開催日ごとにまとめる画面

どれも、これまでなら外注するか、時間をかけて自分で作るしかなかったものです。外注するとまとまったお金がかかり、自分で作るとどうしても見栄えが落ちてしまいます。そのどちらも選びにくくて手を付けられなかったものが、AIを使うと、自分の手で一定の質まで作れるようになりました。

九州シグマさんは、資料をご覧になってAIのセミナーを受けることにされた

九州シグマさんは、化粧品ブランド「BEFORE.」のホームページの制作を僕たちがお手伝いしたお客さまで、化粧品をはじめいろいろな事業をされています。化粧品ブランド「BEFORE.」の商品は、九州シグマさんの「BEFORE.」のサイトで見られます。

九州シグマさんが扱われている化粧品は、メーカーさんから販売用の資料をいただけるのですが、そのままお客さまにお渡しするには見栄えの面で物足りないものもあります。かといって資料のたびに外注するのも難しいので、九州シグマさんは自分たちでチラシのようなものを作られています。

そんなときに、僕がAIで作った資料をお見せする機会がありました。僕たちが作ったシステムの使い方をまとめた、A4横12ページの機能案内で、チラシとはまったく別のものです。それをご覧になって、「すごいですね、感動しました」というメールをいただきました。

「こういう資料は、AIを使えば作れるんですよ」とお伝えしたところ、「ぜひやりたい」というお返事でした。そこで、近くAIの導入セミナーを行うことになっています。

お見せした資料は、サービスの名前・ロゴ・手数料の金額を架空のものに置き換えて、デモとして載せました。運営・メーカー・バイヤーの立場ごとに、どの画面で何ができるかを図と写真でまとめたもので、価格のページでは数字を変えると計算がその場で変わります。

システムの機能案内(化粧品の仕入れサイト・A4横12ページの見本)の画面システムの説明資料システムの機能案内(化粧品の仕入れサイト・A4横12ページの見本)お客さまにお納めしたシステムの機能案内をもとに、サービス名と一部の数字を架空のものに置き換えた見本です。運営・メーカー・バイヤーの立場ごとに、どの画面で何ができるかを図と写真でまとめています。デモを開く(新しいタブで開きます)

この資料は、AI(Claude Code)にシステムのプログラムを読ませて仕組みを書き出してもらい、それを使う人の「やりたいこと」から引ける形に組み直して作りました。写真も、架空のブランドの化粧品で画像生成のAIに作らせています。チラシや商品の案内でも、手元の材料をAIに渡し、読む人の「知りたいこと」から組み直す、という作り方は同じです。

セミナーはまだ行っていないので、九州シグマさんがAIでどんなチラシや資料を作られるのか、その結果はまだ分かりません。

デザイナーでなくても、チラシや資料の見栄えはAIで上げられる

AIを使うと、デザイナーでもエンジニアでもない人が、これまで作っていたもののクオリティを大きく上げて、お客さまに出したり、自分のお店のPRに使ったりできます。

洋菓子店のショーケースの上に、栗のケーキと、同じケーキの写真を使った紹介カードが真鍮のスタンドに立ててある

やることは、AIに材料を渡して形にしてもらい、自分の目で直していく作業です。材料は、商品の写真、お客さまに伝えたいこと、よく聞かれる質問、自分のお店らしさを表す言葉など、お店の人がすでに持っているもので足ります。最初のうちは、材料の渡し方や頼み方を変えて何度か作り直しながら、渡し方を覚えていきます。

ただし、見た目が良くなっても、お店の強みや「誰に来てほしいか」が決まっていないと、きれいなだけで何も伝わらないチラシができてしまいます。AIに渡す材料を考えることが、そのまま自分のお店の強みを言葉にする作業になるので、そこを飛ばさないでください。

チラシやパンフレットを、どこまで自分で作り、どこからプロに頼むかの見分け方は、パンフレットの作り方の記事で書いています。

SNSの投稿やホームページの更新も、AIに話しかけるだけで下書きができ、自分で読んで直したらそのまま公開できるようにしておくと、ずっと続けやすくなります。僕の会社では、会社の情報を渡したうえでSNS運用の提案書をAIに作ってもらいました。お客さまのところでは、話しかけるだけでホームページのブログを更新できるようにした例もあります。

仕事の小さな仕組みも、使う人が自分で作れる

チラシや資料だけでなく、仕事を回すための小さな仕組みも、使う人が自分で作れるようになりました。

パン業界の専門誌「ベーカリーパートナー」の記事では、ベーカリーハイジのオーナーシェフ、宮下真彦さんがClaudeでシフト管理のアプリを作られ、売上日報のアプリも作られていて、「Claudeを使えばコードを書かずに構築できます」と話されています。お店を回している人が、自分の仕事に合わせてツールを作った例です。

僕がAIの1on1レクチャーをしているピークスキャリアさんでは、プログラムを書いたことのない社長が、AIでサービスを動くところまで作られました。そのうえで、お客さまに有料で出す前に、セキュリティやサーバーの設定をプロに確認してもらってから公開されています。

お客さまの個人情報を扱う仕組みや、お客さまに使ってもらう仕組みは、作るところまではAIで進めて、最初の設計と最後のチェックにプロに入ってもらうのがいいと思います。

AIで作った仕組みを公開する前に自分で確かめたいことは、バイブコーディングのセキュリティの記事にまとめました。

始めるなら、自分の仕事を話して書き出すところから

FDE思考で何から始めるかというと、AIを開く前に、自分の仕事の流れを言葉にするところからです。

中小企業白書(2026年版)でも、AIを仕事に使っていない理由で一番多かったのは「活用する業務がイメージできていない」でした。何に使えばいいか分からないまま、AIの画面を開いても手が止まってしまうので、先に自分の仕事を並べてみるのが近道になります。

AIに向いている仕事の見分け方は、AIで業務効率化するときに、どの仕事から始めるかの記事でも紹介しています。

小さなお店でFDE思考を始める順番
  1. 1週間の仕事を話して一覧にする

    いつ・何を見て・何を作っているかまで、声でAIに話して文字にしてもらう

  2. AIで作れそうなものを1つ選ぶ

    味や仕上がり、お客さまへの提案のように自分で決めたいところは外し、残りから選ぶ

  3. 作って、使いながら直す

    選んだものをAIで作り、実際に使って、使いにくいところを直していく

1つ目の「話す」は、文字を打たずに、スマホの音声入力でAIに話しかければ十分です。作業の名前を挙げるだけでなく、「毎週金曜に、次の週の予約を紙の台帳から書き出している」のように、いつ・何を・何から作っているかまで話すと、あとで作るものが具体的になります。

2つ目で、自分で決めたいところを先に外しておくと、残りの作業をAIに任せても、お店らしさを残せます。ケーキ屋さんなら味と仕上げ、美容室ならお客さまの髪への提案が、そういうところに当たりそうです。

自分で試すときは、ChatGPT・Gemini・Claude など普段使っているAIに、次の依頼文をそのまま貼って、自分の仕事を話してみてください。

私は小さなお店(または個人の事業)をしています。これから自分の1週間の仕事を話すので、AIで楽にできそうなところを一緒に探してください。

最初にしてほしいこと
1. 私が話した仕事を、作業の順番どおりに一覧にしてください
2. それぞれの作業に、いつ・何を見て・何を作っているかを書き添えてください

次にしてほしいこと
1. 一覧の中から、私が自分で判断したほうがいいところ(味・仕上がり・お客さまへの提案など)を挙げて、私に確かめてください
2. 残りの作業のうち、AIで下書きや仕組みを作れそうなものを3つまで選び、何を作るかを1行ずつ書いてください

注意
お客さまのお名前や連絡先は話さないので、例は架空のものにしてください。

気をつけたいこと

AIで作ったものは、そのまま出さずに、お店の人が自分の目で確かめてから使ってください。気をつけたいところは、次の3つです。

  • 事実と数字価格・営業時間・成分・日付は、AIが元の材料から書き写すときに変わることがあります。材料と見比べてから出してください
  • 表現の決まり化粧品や医薬品に近いものは、広告で言える効果の範囲が法律で決まっています。AIが作る文は言い過ぎることがあるので、使ってよい表現かを確かめてください
  • お客さまの情報お客さまのお名前や連絡先をAIに入れる前に、使っているAIのサービスの設定と利用規約を確かめてください

化粧品の広告の決まりは、厚生労働省の「医薬品等の広告規制について」のページで確かめられます。化粧品も、効能や効果について大げさな広告をすることは、法律で禁じられています。

アディザインに相談する場合

AIを使って、お店や会社の「見せるもの」と「仕事の仕組み」を自分たちで作れるようにしたい場合は、状況に合わせて次のページをご覧ください。

明るい会議室で、お店を経営する女性が自分の仕事を話し、向かいの男性がノートパソコンで書き留めている
  • AIを使ったことがない、まず触ってみたいAI基礎講座
  • 自分の仕事の困りごとを題材に、AIで作るところまで進めたい課題解決型セミナー
  • セミナー・研修の全体を見て決めたいAI活用・セミナー
  • ホームページの更新を、AIに話しかけて進められるようにしたいホームページ制作(運用をAIに任せられるホームページのプランもあります)
  • ホームページやSNSを、自社で回せる体制を作りたい内製化支援

課題解決型セミナーは、自社の仕事の困りごとをそのまま題材にして、AIでの解決を試作まで進める内容です。最新の内容と料金は、各ページで確認してください。

よくある質問

Q. FDE思考を身につけるのに、プログラミングの知識は必要ですか?

チラシや資料、自分の仕事で使う小さな仕組みなら、AIに日本語で指示を出して始められます。お客さまに使ってもらう仕組みを作るときは、最初の設計と公開前のチェックに、プロの確認を入れると安心です。

Q. 求人で見かける「FDE」とは別のものですか?

求人のFDE(Forward Deployed Engineer)は、お客さまの現場に入って仕組みを作るエンジニアの職種です。FDE思考は、その考え方を、現場で仕事をしている人の側から取り入れるものなので、職種の名前とは別に考えてください。

Q. AIで作ったチラシを、そのままお店で使ってもいいですか?

使う前に、価格や日付などの事実と、法律で決まっている表現を確かめてください。あわせて、ほかから借りてきた写真や文章が入っていないかも見ておくと安心です。とくに化粧品は、言える効果の範囲が決まっているので注意が要ります。

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まずは、話すことから。

「何を頼めばいいか分からない」段階で構いません。ご提案・お見積りまでは無料です。つくるものが決まっていない状態からのご相談も歓迎します。